カトリック上福岡教会

説教

年間第16主日(C年 2022/7/17)

ルカ10:38−42

父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。

今日のルカによる福音は、エルサレムまであと一息のベタニヤの町に住むラザロとマルタとマリアの家を、エルサレムへの最後の旅の途上に主キリストがお訪ねになられた時のことを、伝えていました。

実はヨハネによる福音によれば、主キリストはこの時とは別に二度、ベタニヤに彼らを訪ねておられます。主が、死んだラザロを甦らせてくださった時(ヨハネ11)と、エルサレム入城直前に、マリアから香油を注がれた時です(ヨハネ12)。

さて、今日の福音で、主キリストがラザロとマルタとマリアの家をお訪ねになられた時のことです。姉のマルタは、主を家に迎え入れ、「いろいろのもてなしのためにせわしく立ち働いていた。」しかしその間、妹の「マリアは主の足もとに座って、その話に聞き入っていた」と福音は伝えていました。

姉のマルタは、「主よ、わたしの姉妹はわたしだけにもてなしをさせていますが、何ともお思いになりませんか。手伝ってくれるように仰ってください」と主キリストに訴えました。その時、主は、「マルタ、マルタ、あなたは多くのことに思い悩み、心を乱している。しかし、必要なことはただ一つだけである。マリアは良い方を選んだ。それを取り上げてはならない」、とマルタを諭されたと福音は伝えています。

「主の足もとに座って、その話に聞き入っていた」妹のマリアを、主キリストは深くいとおしんでおられたと思います。しかし、姉のマルタに、「マルタ、マルタ」と心を込めて二度も繰り返して彼女の名前をお呼びになっておられる主のマルタに対する思いも、わたしたちには痛いほどに伝わってきます。主は、明らかに二人を同じようにともに深く愛しておられたに違いないと思います。

ただしこの時は、主キリストはマリアがご自身のみ前に跪いてご自身のことばに耳を澄まして聞き入っていることをことのほかお喜びになられたと思います。神のみことばに聞く。それは、神のみことばである主キリストのみ前に跪くことです。

律法、すなわち神のことばの教師を自認しつつ、結果的には、受肉された神のみことば主キリストを十字架につけることになる律法学者たちには、どうしても理解できない真実を、マリアは身体で知っています。主のみ前に心からの懺悔と感謝をもって跪く他に、神のみことばに聞く術はないという真実を。その上、神のみことばである主キリストに聞くことは、実は主のいのちをいただくことなのだという、主にとっても、わたしたちにとっても掛け替えのない厳粛な真実をも。

「必要なことはただ一つだけである。」それは、主キリストのみ前に跪き、主のみことばに聞き、みことばの内に主のいのちをいただくことです。「マリアはそれを選んだ。彼女からそれを取り上げてはならない」、と主は仰せになりました。

ここでわたしたちは、ルカによる福音が、ベタニヤのマリアが主キリストのみことばに聞く姿を、主がご自身の祈りである「主の祈り」を弟子たちにお与えになられる直前の出来事として伝えていることを、見逃してはならないと思います。

「祈り」こそ、パウロが「聖霊のうめき」(ローマ8:26)と語る、最も優れた意味での「ことば」です。主キリストが「ご自身の祈り」をお与えくださるのは、わたしたちに祈りを教えてくださったという以上に、「聖霊のうめき」としての「ことば」、すなわち主ご自身をわたしたちにお与えくださるということです。主のみ前に跪くマリアの姿に、主から「主の祈り」、すなわち、みことばなる主ご自身のいのちである「聖霊」をいただくわたしたちのあるべき姿を、教えられるのではないでしょうか。

先にヨハネによれば、主キリストは、今日の福音とは別に二度マルタとマリアを訪れておられ、その最初は彼らの兄弟ラザロが死んだ時のことであったと申しました。

この時、主キリストの訪問を受けながらも、マリアは悲しみゆえに立ちあがって主をお迎えすることができませんでした。その主を家に迎え入れ、「わたしは復活であり、いのちである。このことを信じるか」との主の問いに、「主よ、あなたが世に来られるはずの神の子、メシアであるとわたしは信じております」と、信仰の告白を以てお応えしたのは、実はマルタです。このマルタの信仰に応えて、主はラザロに再び命を与えて、彼をマルタとマリアにお返しになられました。

姉のマルタも主キリストに聞き続けた人であったことは間違いありません。ただし、人には、それぞれ逃してはならない時があります。妹のマリアは、今日の福音の時には、すべてを措いて主に聞かねばならなかったのです。主はマリアにその時を保証し、祝福を以てみことばであるご自身を彼女にお与えになられたのです。

父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。

ゆりのイラスト

「説教」一覧へ

トップヘ戻る