カトリック上福岡教会

説教

復活節第4主日(C年 2022/5/8)

ヨハネ10:27−30

父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。

「わたしの羊はわたしの声を聞き分ける。わたしは彼らを知っており、彼らはわたしに従う。わたしは彼らに永遠のいのちを与える。彼らは決して滅びず、だれも彼らをわたしの手から奪うことはできない。」

ヨハネによる福音は、この主キリストのみことばが、エルサレム神殿奉献記念祭に、神殿で主の弟子たちとユダヤ人たちに語られたことを伝えていました。「そのころエルサレムで神殿奉献記念祭が行われた」、そして、その時は「冬であった」、と。

ユダヤではハヌカと呼ばれるこの祭りは、紀元前2世紀の始め、当時の大国シリアの王によって蹂躙され汚されたエルサレム神殿を、紀元前164年のキスレイの月に、ユダ・マカバイが再び聖別し、新たに神に奉献したことを記念し、毎年同月に8日間にわたってエルサレムで盛大に祝われていました。ユダヤ月キスレイは、現在の11月から12月に当たり、「冬」の季節の祭りです。しかし今日の福音が、福音の語るこの時を事更に「冬であった」と語るのには理由があるはずです。

実は、ヨハネによる福音は、主キリストが、この祭りの最中に、はっきりとユダヤ人たちに拒絶され、主に対する彼らの殺意が露わになったことを伝えています。事実、この後福音は、エルサレム郊外のベタニヤで、主がマルタとマリアの兄弟ラザロを死から命へとよみがえらせてくださったことを伝えた後、直ちに、過越祭の最中にエルサレムで起こった、主ご自身の死と復活へと語り継ぎます。

福音が語るように、確かに時は「冬であった」と言うべきです。信じがたいことに、神の聖名の置かれた神の宮エルサレム神殿の再聖別と再奉献が記念されている最中に、しかもその「神殿の境内」で、「神殿の主・神なるキリストご自身」が、彼の民によって拒絶され、死へと定められました。この時、「ユダヤ人たちは、イエスを石で打ち殺そうとして、また石を取り上げた。」主キリストとわたしたちすべてに対して、「冬」を耐えがたいまでに厳しくするのは、明らかにわたしたちの罪です。

今日の福音の直前に、主キリストは、彼をメシア・キリストとして受け入れないファリサイ派の人々に対して、すでに次のように仰せでした。「わたしは言ったが、あなたたちは信じない。わたしが父の名によって行う業が、わたしについて証している。しかし、あなたたちは信じない。わたしの羊ではないからである。」

その上で、主キリストは、「主の羊」、すなわち主を信じる者たちへの、今日の福音のおことばをお語りになられました。「わたしの羊はわたしの声を聞き分ける。わたしは彼らを知っており、彼らはわたしに従う。わたしは彼らに永遠のいのちを与える。彼らは決して滅びず、だれも彼らをわたしの手から奪うことはできない。」

続けて主キリストは、今日の福音を、次の驚くべきおことばによって結ばれます。「わたしの父がわたしにくださったものは、すべてのものより偉大であり、だれも父の手から奪うことはできない。わたしと父は一つである。」フランシスコ会訳聖書では次のようです。「父がわたしにくださったものは、他の何ものよりも価値があり、だれもそれを父の手から奪い去ることはできない。わたしと父とは一つである。」

「父がわたしにくださったもの」とは、父なる神が、御子キリストに託された人々、つまり主を信じる者たちのことです。彼らを主キリストは、「他の何ものよりも価値がある。」それゆえ、彼らを「だれからも決して奪わせない」と仰せです。主キリストは、大切な彼らをご自身のいのちに代えても守り抜いてくださるといわれるのです。

わたしたちは、その彼らがわたしたちのことであって欲しいと切に願います。主に対する懺悔の心をもって。ただし、主にとって、彼らがわたしたちのことであれば、これは驚くべき主キリストのみことばです。わたしたちは到底、主ご自身のいのちを賭してまで大切に守られるに値するものではないからです。しかし、もしそれが父なる神のみ旨であり、天の父なる神が御子キリストに求めておられることであれば、主はご自身を犠牲にしてでも、ご自身のいのちに代えて、このわたしたちを守ってくださる。なぜなら、「わたしと父は一つである」と主は言われる。事実、主キリストは、後にご自身の十字架において、わたしたちにその通りにしてくださいました。

実は、今日の福音に先立って、すでに主キリストはご自身を「羊飼い」、しかも「良い羊飼い」にたとえて、次のように仰せになっておられました。

「わたしが来たのは、羊がいのちを受けるため、しかも豊かに受けるためである。わたしは良い羊飼いである。良い羊飼いは羊のためにいのちを捨てる。」

わたしたちは、今このごミサで、「良い羊飼い」・十字架のキリストを記念しています。

父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。

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