カトリック上福岡教会

説教

四旬節第4主日(C年 2022/3/27)

ルカ15:1−3、11−32

父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。

「急いでいちばん良い服を持って来て、この子に着せ、手に指輪をはめてやり、足に履物を履かせなさい。それから、肥えた子牛を連れて来て屠りなさい。食べて祝おう。この息子は、死んでいたのに生き返り、いなくなっていたのに見つかったからだ。」今日の福音の主キリストの「放蕩息子のたとえ」の中で、放蕩の後、行き場を失い父のもとに帰って来た息子を迎えた「父」のことばです。

「放蕩息子のたとえ」を含めて、主キリストは、ご自身の「神の国の福音」の宣教を、多くの「神の国のたとえ」を用いてなさっておられます。同時に、主は、それと並行して、これも繰り返して、ご自身の「十字架と復活」を予告されておられます。「神の国」とくに「その完成」と主の「十字架と復活」は、切り離すことができないからです。

さて今日の福音のたとえで、「放蕩息子」が父の許に帰って来た時、父は、まだ遠く離れていたにもかかわらず息子を見つけ、「死んでいたのに生き返り、いなくなっていたのに見つかった」と喜び、息子のために祝宴を開いたと言うのです。

「放蕩息子」には兄がいます。明らかに兄として暗示されているユダヤの民から見て、元来異邦人であったわたしたちは、主キリストの今日のたとえを、弟である「放蕩息子」に当てはめて聞く他無いと思います。ただここで、聞き逃してはならないことがあります。今日のたとえで、主は、元来異邦人であったわたしたちも、兄であるユダヤの民と「同じ父の子」である、とはっきり仰っておられることです。このことは、わたしたちには非常に重要であると思います。

元来異邦人のわたしたちが、その尊さをわきまえないままに、自分のためにだけ今日まで浪費し続けていた「財産」も、その一切は兄と「同じ父」からいただいていたものだからです。その事実を、わたしたちは今日の主キリストのたとえを通してはっきりと知らされました。その「父」から受けた御恩ばかりか、わたしたちのまことの「父」を忘れ果てての「放蕩」の後に、それにもかかわらず、「父」はわたしたちを喜んで「父の家」に再び迎え入れてくださったというのです。

それだけではありません。そのような「父」に対する兄の激しい抗議にもかかわらず、父はわたしたちを再び受け入れてくださったばかりか、「父」はわたしたちのために大きな犠牲をさえ払ってまでして祝宴を整え、わたしたちを「父の食卓」にまねいてくださいました。主キリストは、父は「犠牲を屠って」わたしたち「放蕩息子」のために祝宴を整えてくださっておられたと語っておられました。

「急いでいちばん良い服を持って来て、この子に着せ、…それから、肥えた子牛を連れて来て屠りなさい。食べて祝おう。この息子は、死んでいたのに生き返り、いなくなっていたのに見つかったからだ」との、「父」の大きな喜びは、放蕩と忘恩の限りを尽くしながらも、そのようなわたしたちを、なお、ご自身の「子」としてくださる「父」の、大き過ぎる犠牲と引き換えでもありました。

今日の「放蕩息子のたとえ」は、「神の国のたとえ」の一つであると、先に申しました。「神の国のたとえ」とは、わたしたちのただ中で、「神の国の主」キリストが、すでにお始めになっておられる「神の国」の事実と、その事実の力と真実へと、わたしたちの目を開かせるために、主キリストが語られたものです。

今日の福音が指し示す「神の国」の真実。それは、「死んでいたわたしたちが生き返り、いなくなっていたわたしたちが見つけられた」という、「父」なる神の「大いなる喜び」のために、父なる神は、いかに大きな犠牲、たとえそれが御子キリストを十字架に付けると言うほどの犠牲であっても、わたしたちのためにこれを厭わず行ってくださる、と言うこと以外の何ものでもありません。

ユダヤの民から見たら「放蕩息子」以外の何者でもない異邦人のわたしたち。まことの神である「父」を忘れ、忘恩の限りを尽くして来たような長く深い罪の歴史がわたしたちにはあります。そのようなわたしたちを「父」は喜んで父の家に迎え入れ、わたしたちのために「犠牲を屠って」食卓を整え「神の国の祝宴」へと招き入れてくださいました。これこそ、「神の国の主」キリストによって、父なる神がわたしたちの内に始められている恵みの事実です。それがごミサです。

ただしそのわたしたちのための「神の国の祝宴」・ごミサの食卓・祭壇のために、「父」なる神が犠牲として屠られたのが御子キリストであられたことを、わたしたちは忘れてはなりません。「神の国のたとえ」は、すでに主キリストによってわたしたちのただ中に始められている恵みの事実を語ります。その「神の国」の完成は、ひとえに御子キリストの犠牲の十字架とご復活にかけられています

父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。

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