説教
聖パウロの回心
年間第３火曜日（C年 2022/1/25）
使徒9：1−22、マルコ16：15−18
父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。
聖パウロの回心の記念の祝日。聖人の回心が記念されるのは、聖パウロだけです。その意味でも、聖パウロはキリストの使徒たちの中でも特別な存在です。
聖ペトロを頭とする主キリストの十二使徒たちは、主の洗礼の後、主から直接召出しを受け、地上での主ご自身の福音宣教に随行させていただいたのみならず、主の最期の晩餐をも共にすることを許されました。さらに彼らは、続く主の十字架とご復活の直接の証人とされました。聖パウロでさえ、主との地上での生活の経験を欠くが故に、聖ペトロを頭とする主の十二使徒に代ることはできません。
聖ペトロたち十二使徒とは異なり、聖パウロは、十字架の死を経て復活された主キリストによって召されて使徒とされました。したがって、聖パウロの回心、聖パウロの復活の主による召出しの体験は、彼と同様、地上の主との生活を体験しておらず、復活の主キリストによって召されたわたしたち自身の召出しの体験の意義とその本質を明らかにしてくれる貴重な体験であるに違いありません。
その聖パウロの回心、復活の主キリストによる聖パウロの召出しについて、『使徒行録』は、大切な二つのこと、実は二つで一つのこと、を伝えてくれています。最初に、復活の主キリストに召された時、聖パウロは、「再び目が見えるようにされた」、ということです。次に、聖パウロは、その時、「聖霊に満たされた」、と言うことです。
復活の主キリストに召された時、聖パウロの目は再び開かれました。その時、聖パウロの目に映った世界は、どのようであったでしょうか。もちろん、復活の主キリストに召される前と同じであったはずはありません。かつてのパウロの目に見えていた世界は、主キリスト不在の、自分を中心とする世界ではなかったでしょうか。それは、仮に彼の肉の目が開いていたとしても、自分自身の罪の陰を映し出しているような、暗闇のような、救いのない世界であったのではなかったでしょうか。
それに対して、復活の主キリストによって開かれた目に映った、聖パウロの新しい世界は、どうだったでしょうか。そこでは、主キリストが中心であったはずです。主の栄光によって照らされていた世界であったはずです。そこは、聖パウロにとって、主にお仕えし、主のために生きるという使命が明らかにされている世界であったに違いありません。復活の主キリストによって、主と共に生きるように召された世界です。
聖パウロの回心と言います。復活の主キリストからいえば、聖パウロの主とともに生きる世界への召出しです。回心とは、心を廻らすということです。自分が中心であった古い世界から、主が中心である新しい世界に心を向け直す、否、主によって心を向け直されていただくということです。新しい世界では、主であるキリストにお仕えする者としての自分の役割がはっきりしています。それが、召出しです。
そのために、復活の主キリストによって召出された聖パウロは、その時、聖霊を与えられました。誰も、聖霊の助けなしに、主にお仕えして生きることはできないからです。同時に、聖パウロを召出された復活の主が神であられることが、ここに明らかとされました。聖霊を与えることがおできになるのは、ただ神お一人だからです。
主キリストは、神のことばを告げるだけの預言者ではありません。主は、神の子であり、神ご自身です。主は、ご自身のことばである神のみことばとともに聖霊をお与えになることがおできになる。この聖霊こそ、神のみことばをわたしたちの内に、またわたしたちを通して隣人に、実を結ばせてくださる神の恵みと創造のみ力です。
聖パウロは、復活の主キリストから神のみことばを託されたのみならず、聖霊を豊かに受けたのです。それは、神のみことばが聖パウロの内に豊かに実を結び、彼をキリストの似姿にするのみならず、聖パウロの宣教を通して、神のみことばがわたしたちを含めて、彼から神のみことばを聞くものすべてに豊かに実を結ぶためです。
『使徒行録』が、このように聖パウロについて語ることに決して偽りはないことは、新約聖書の聖パウロの書簡と、それが教会の信仰の歴史に大きな影響を与え続けて来たという事実によって明らかです。事実、わたしたち自身が、その証人です。
聖パウロは、復活の主キリストによって召され、目が開かれ、聖霊を与えられて、主キリストの使徒とされました。聖パウロは、神の恵みの証人として、神の約束のみことばが、聖霊によって、彼自身と多くの人々に一つひとつ実を結んで行くのを見届けつつ、主キリストに召された生涯を殉教の死に至るまで神に捧げつくしました。
わたしたちもまた、聖霊のみ力を受け、神のみことばによって日々新たにされる生涯へと、聖パウロのように、復活の主キリストから召出されています。神に感謝。
父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。
