説教
待降節第1主日(A年 2022/11/27)
マタイ24:37−44
父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。
待降節第一主日。待降節から始まる教会の暦で今年はA年。福音は、おもにマタイによる福音からお聞きいたします。ルカとは語り方は異なりますが、マタイも福音の冒頭に、主キリストのご降誕に係わる人知を超えた不思議な出来事を語ります。
マタイやルカが主キリストのご降誕の出来事を物語る福音の冒頭で、しかし、ヨハネは福音の冒頭で、旧約『創世記』冒頭の神のことばをわたしたちに想起させます。「神は言われた。『光あれ。』」(創世記1:3)。神の天地創造の始めを語る旧約の神の「光あれ」とのみことばを受けて、新約のヨハネによる福音は巻頭で、その光はキリストであると、明確に宣言しています(ヨハネ1:4)。
ヨハネはさらに続けて、「光は闇の内に輝いている。そして闇は光に勝たなかった」(ヨハネ1:5)と語り継ぎます。確かに、闇は光に勝つことはありません。なぜなら、闇がいかに深く、如何に重くとも、また、闇の支配が永遠に続きそうに思えても、「一燭の光」が灯されれば、その瞬間に闇は終わるからです。
待降節は、祭色の「紫」が示すように、祈りを整え主キリストのご降誕に備える慎みの時。ただ、日本語で「待降節」(わたしたちを主語に、主のご降誕を待つ時)と訳すラテン語 Adventus(英語で Advent)は、元来、主キリストが主語で、「主が来られる」という意味です。使徒ペトロが、「主キリストは、神ご自身の確かな約束に従って来られる」(第2ペテロ3:13)と教える通り、主が、必ず来られるのです。だからわたしたちは主を待つのです。喜びと期待の中にも謙遜と神への畏れの内に祈りを整えて。
待降節第一主日に相応しく、今日の福音で、主キリストは「目を覚ましていなさい」と仰せでした。これは、マタイによる福音の第23章の終りから25章までに伝えられる主の「終末預言」と言われるおことばの一節です。主は、わたしたちに「目を覚ましていなさい。いつの日、自分の主が帰って来られるのか、あなたがたにはわからないからである」と、仰せになっておられます。
聖書において「終末」とは、たんに「世の終わり」を意味しません。神の遣わされる救い主キリストによって、天地の創造主、歴史の支配者である天の父なる神が決定的な仕方で、かつ目に見えるお姿で歴史に介入され、神のみ心が行われる時のことです。すなわち、「終末」とは、主キリストが来られる時、に他なりません。
したがって、「終末」とは、主キリストによる「古い時の終わり」であるとともに、主キリストによる「新しい時の始め」でもあります。「終末」という「神の時」の中心に立っておられるのは、主キリストです。「目を覚ましていなさい」。なぜなら、わたしたちは、この主キリストを、決して見失ってはならないからです。
確かにマタイの伝える主キリストの「終末預言」の中で、主は天変地異や戦争などの「大きな苦難」に触れておられます。これに触発されてか、2011年3月の東日本大震災以来、日本各地での相次ぐ災害、いよいよ安定感を欠く東アジアを含む国際情勢全般、加えて今年2月に起こったロシアによる主権国家ウクライナ侵攻という信じられない出来事と、「終末の徴」を巡っての巷の議論は尽きません。
ただし、そのような「大きな苦難」でさえ「まだ世の終わりではない」と、主キリストはっきり仰せの上で、ご自身の「終末預言」を「栄光の王なる主キリストの(十字架上での)即位」を語る「主の来臨」の約束によって結んでおられます(マタイ25:31-46)。
「目を覚ましていなさい」との主キリストのみことばは、わたしたちにゲッセマネの主を思い起こさせます。世を徹して祈られる主は、傍で眠り込む弟子たちに仰せでした。「なぜ眠っているのか。誘惑に陥らぬよう、目を覚まして祈っていなさい。」
「目を覚ましていなさい。」それは、「いつも目を覚まして祈る」ためです。事実、ルカによる福音では、「終末預言」の結びに、主キリストは、「人の子の前に立つことができるように、いつも目を覚まして祈りなさい」と仰せです。主の「過ぎ越し」すなわち、ご自身の十字架とご復活を以て古い時を終わらせ、新しい時を始めてくださる「終末」の主の証人とさせていただくために、「いつも目を覚まして祈りなさい」。
「主の時」が近づいています。待降節は、降誕日にベツレヘムで聖母マリアさまからお生まれになる救い主キリストを、わたしたちの祈りを整えて待つ大切な時です。
待降節第一主日の今日この日に灯された待降節第一の蝋燭が示す「主キリストの光」を見つめ続けてください。「闇は光に勝てない」とのヨハネのメッセージを胸に、さらに二本、三本、四本と毎主日ごとに待降節の蝋燭に火を灯し続け、世界を主キリストの光で満たしつつ、主のご降誕の日を待ち望みましょう。
父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。