カトリック上福岡教会

説教

受難の主日(枝の主日)(B年 2021/3/28)

マルコ15:1−39

父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。

「本当にこの人は、神の子だった。」 ご一緒に福音にお聞きしながら四旬節を歩ませていただいて参りました。それは、ちょうど主キリストに伴って、主とともに、福音に語られた人々との出会いを重ねる旅のようでもありました。

主キリストの出会われた一人ひとりの辿った人生は異なっていました。その中には、主にお会いするや否や主を信じ、素直に自分たちを主に委ねていった多くの人々がいました。しかし、主のみことばを聞き、主のみ業に与りながらも、なお主を疑い、イエスさまを主キリストとして受け入れることができなかった人々もいました。

あるいは、エルサレムの群衆のように、ひとたびはイエスさまを救い主キリストと歓喜の声をもって迎えたにもかかわらず、その同じ週の内、まさにその舌の根も乾かぬ内に、その同じ主キリストを、「十字架につけよ」と叫び出した人々もいました。これらの人々の内、いったい誰がこのわたしなのか。実際は、そのすべての人々がこのわたしである、あるいはわたしであった、というべきかもしれません。

復活の主キリストの使徒パウロは、「聖霊によらなければ、だれもイエスは主である、と信じることはできない」(Iコリント12:3)と告白しています。その通りだと思います。わたしたちが、もし喜んで御子・主キリストを信じさせていただいているというのであれば、それはひとえに父なる神の恵みであり、聖霊の御導きであると思います。

事実、主イエス・キリストを疑わず信じさせていただく、これは本当に恵みです。神に対する最も難しい罪とはなんでしょうか。神に背き悪事を行うことでしょうか。それなら回心して神に立ち返ることもできるでしょう。実は、最も深刻な罪とは神を疑うことです。主なる神キリストを疑い続ける限り、その人には心底から信じ自分を委ね切ることができる神も回心して立ち返るべき神がいません。救いがありません。

主キリストの時代の律法学者やファリサイ派の人々がそうでした。彼らは、約束されていた救い主キリストを、熱心に待ち望んでいた人々でした。しかし、彼らはイエスさまにお会いした時に、彼を主キリストと受け入れることができませんでした。自分たちを主に委ねることができなかったのです。自分たちの知恵に頼って主を疑ったからです。それが罪です。主は、それを本当に悲しまれたに違いありません。

律法学者だけではありません。主キリストを信じ切れず、主に自らを託しきれず、どこかで主を疑うわたしたちのただ中で、そのわたしたちのために、黙々と十字架を負って歩まれる主イエス。四旬節の間、主とともに多くの出会いを重ねてきた中で、わたしたちは、わたしたち自身に、また同時に主キリストご自身に、繰り返し出会い続けてきたのではないでしょうか。主を疑うわたし、に。そして、そのようなわたしのために、主を疑うわたしの罪を一身にご自身の十字架として背負い、背負い抜いてくださる主イエス・キリスト、に。

どこかで主キリストを疑っていたがゆえに、かつては主に捧げる何物も用意できなかったわたしでした。しかし、主はそのわたしのために、十字架の死に至るまで、ご自身の一切を、ご自身の御からだと御血の最後の一滴に至るまで捧げ尽くしてくださいました。十字架の主キリストは、このわたしの疑いの罪を破り、わたしに信仰をお与えくださる唯一の神です。

「信仰の神秘」。それは、主キリストが、主を疑うこのわたしを、主を信じる者としてくださった、つまり主キリストご自身がわたしの「信仰そのもの」となってくださった、ということです。どこかで神を疑うこのわたしが、主なる神キリストを信じさせていただくためには、それしか道が無かったのです。

主キリストの十字架。ここに初めて、そして最終的に、わたしたちの神への疑いが破られ、わたしたちが神を信じ、わたしたち自身を神に委ね切り、わたしたちを神に捧げつくして生きて行くことが赦される新しいいのちが、わたしたちの身の事実とされたのです。それが、「信仰」です。「信仰は、まさに主キリストによってわたしたちに与えられた恵みの神秘」です。

信仰。それは、主キリストがご自身の十字架の死をかけて、わたしたちをもはや主を疑うことができない者としてくださった、神なる主の恵みの事実です。そして、その事実を事実として受け入れさせてくださるのは「聖霊」、すなわち活ける主キリストによるとパウロは教えています。

主キリストはわたしたちの疑いの罪を破り、ご自身がわたしたちの信仰となってくださるために、ご自身のいのちをわたしたちにお与えくださいます。ご自身の御からだであるご聖体において。それがごミサです。わたしたちは、ごミサで、主から信仰をいただくのです。

父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。

ゆりのイラスト

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