説教
聖霊降臨の主日（A年 2020/5/31）
ヨハネ20：19−23
父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。
ご復活の主キリストは、弟子たちに「息を吹きかけて言われた。『聖霊を受けなさい』。」「聖霊」とは、「ご復活の主キリストの息」です。聖霊降臨の主日のヨハネによる福音は、私たちに一つの「事実」の大切な二つの側面を思い起こさせてくれます。
最初に、ご復活の主キリストは、「造り主なる神」であるという紛れもない事実です。ご復活の主は、私たちにご自身の「いのちの息・聖霊」を吹きかけ、命を与えてくださいました。これは「造り主なる神」にのみおできになることです（創世記2：7）。
同時に、ご復活の主キリストから「いのちの息・聖霊」をいただくまで、私たちの内には命はなく、否、神のみ前に命を失ってさえいたと言う私たちの現実です。マタイによる福音が記すように、かつての私たちは「牧者のいない羊の群れのように疲れ果て、倒れていた」（9：36）。そのような私たちを、ご復活の主は大切に「抱き起こし」、「ご自身の息・聖霊」を与え、私たちを再び「生きる」者としてくださいました。
ヨハネによる福音で主キリストご自身が「聖霊」を「弁護者」つまり「傍らに来て助け起こす方」とお呼びになっていたこと、さらに旧約及び新約の言葉で「復活する」とは、元来「倒れている人を抱き起こす」あるいは「傷ついた人を介抱する」との意味であることを思い起こせば、「聖霊」とは目に見えないご復活の主ご自身のお働き、否、目に見えるむしろ私たちに具体的に体験されるご復活の主キリストその方です。
ご復活の主が私たちに「ご自身の息・聖霊」をくださる。実はそれは、ご復活の主キリストによって、「倒れていた」私たちが、大切に「抱き起こ」され、あるいは、「傷ついていた」私たちが「介抱して」いただいたという、非常に具体的な体験、ご復活の主キリストによって命を与えられた私たち自身の復活の体験ではないでしょうか。
ただし、私たちはご復活の主キリストのみ前に、なぜ「いのちを失い」あるいは「傷つき倒れて」いたのでしょうか。明らかにそれは「罪ゆえ」です。主はその私たちに「聖霊」すなわちご自身のいのちを与えて、罪を赦してくださいます。それのみならず私たちは、「聖霊」によって罪赦された私たちを通して多くの人々に罪の赦しを与えようとなさる神に奉仕する者としてさえ用いられるのだと福音は告げていました。「聖霊を受けよ。だれの罪でも、あなたがたが赦せばその罪は赦される。」
ご復活主日から五十日目に、私たちは、「聖霊降臨」を記念します。「聖霊降臨」について、聖書の語り方は一様ではありません。「聖霊降臨」が私たちの日常の体験を超えた出来事である以上、これは当然のことなのでしょう。
ただし、ヨハネの福音が語るように、「聖霊降臨」の核心には、ご復活の主キリストご自身が、私たち一人ひとりにご自身の「いのち・聖霊」を吹きかけ、私たちに罪の赦しによる新しい命をお与えくださったという、具体的なわが身の事実があります。
つまり「聖霊降臨」の核心には、傷つき倒れ、命を失っていた私たちが、ご復活の主キリストによって大切に「抱き起こされ」さらには「傷を癒していただいた」という、私たち自身の死から復活への体験の事実があります。「聖霊降臨」とは、私たちのこの体験によってのみ語り得る、確実なそして深い魂の感動の事実です。
したがって聖霊降臨の「祝い」の中心はこの「事実」、この事実の感動です。造り主なる神・主キリストご自身からの私たち一人ひとりへの「聖霊の注ぎ」。罪に死んでいた私たちの神のいのちへの復活。これが、聖霊降臨の日に私たち一人ひとりにご復活の主キリストが聖霊によって成就してくださる事実です。これが福音です。
最早私たちは、自らの罪ゆえの弱さ、惨めさの内に絶望してうずくまる必要はありません。今や、ご復活の主キリストが私たちにお与えくださる｢聖霊｣によって主ご自身が私たちと「いつも共にあって」私たち一人ひとりを「抱きしめ」「抱き起こし」、主ご自身の新しいいのちと希望で私たちを生かし支え続けてくださるからです。
洗礼者ヨハネは、自らの殉教の死を前に、しかし、死を超えてご復活の主キリストによって始められる「聖霊」による新しいいのちの予感に歓喜して叫びました。「私は喜びで満たされている。キリストは栄え、私は衰える。」（ヨハネ3：29b、30）
洗礼者ヨハネのこの言葉と響き合うようにして、ご復活の主キリストの使徒パウロも彼自身の体験の事実の大いなる感動の内に語ります。「生きているのは、もはや私ではありません。キリストがわたしの内に生きておられるのです。」（ガラテヤ2：20）
聖霊降臨。「聖霊」による新しい命の始め。それは私たちの思いを遥かに超えた「造り主なる神」の天地創造のみ業。しかし同時に、ご復活の主キリストが私たち一人ひとりに、「聖霊」において成就してくださる、非常に具体的な私たちの身の事実です。
父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。
