説教
待降節第二主日（B年 2020/12/6）
マルコ1：1−8
父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。
アドベントの第二のろうそくに火が灯りました。主キリストの使徒ペトロは、アドベントのわたしたちは、「義（即ち、救い主キリスト）の宿る新しい天と地（即ち、神の国）を、神の約束に従って待ち望んでいるのです」と教えていました（第２朗読、２ペトロ3：13）。
後に、主キリストご自身がわたしたちに、「時は満ち、神の国（つまり、約束されていた義であるキリストの宿る新しい天と地）は近づいた（ギリシャ語では現在完了）。悔い改めて福音を信じなさい」（マルコ1：14、15）と、新しい時の始めを高らかに宣言されます。
その主キリストの使者である洗礼者ヨハネを、マルコによる福音は、旧約の預言者イザヤのことばを引いて、「主の道を整え、その道筋をまっすぐにせよ」と「荒野で叫ぶ者の声」（イザヤ40：3a）と、不思議な紹介をしました。しかしこれは、わたしたちに、続くイザヤの預言の次のことばを思い起こさせます。
「わたしたちの神のために、荒れ地に広い道を通せ。谷はすべて身を起こし、山と丘は身を低くせよ。険しい道は平らに、狭い道は広い谷となれ。」（イザヤ40：3b、4）
主キリストが来られる。「来るべきこの神なる主をお迎えするために、荒野に広い道を準備しなさい。そのために、高い山は削り、深い谷は埋めなさい。険しく狭い道があれば、広く平らにしなさい」と、預言者イザヤを通して、主は、わたしたちに強く求めておられます。わたしたちが、主なる神にお会いさせていただくために。
しかし、主キリストは、なぜこのように仰せになられるのでしょうか。わたしたちが、天地の創造主、全能の父なる神にお会いさせていただくためには、高い山を上り、深い谷を下るような決死の努力や厳しい修行が求められてしかるべきではないでしょうか。実はその理由を、神は預言者イザヤを通して、次のように仰せです。
「主の栄光がこうして現れるのを、肉なる者（すなわち、わたしたちの一人残らずすべて）は共に見る。」（イザヤ40：5）
神がお会いくださろうとされるのは、高い山に自力で上ることができる者たちや、低い谷を自らの足で降りきることができる者たちだけではありません。むしろそのような優れた者たち、選ばれ限られた者たちだけではなく、「肉なる者」すなわち「わたしたちのすべて」が、一人残らず皆「ともに」神に見（まみ）えることができるようにと、神は心からわたしたちに仰せになっておられるのです。
「わたしたちすべてが共に」と言う時、特に「弱い者」、「貧しい者」、「小さい者」のように高い山に登ることも、深い谷を渡ることもできない者が、その中に含まれていなければなりません。神の存在なしに生きることができない、神に助けていただかなければ生きられない者にこそ、神は真にお会いしたいと願われておられるのです。実はその「貧しく、小さい者」こそ、わたしたち自身のことではないでしょうか。
そのようにして神にお会いさせていただいたわたしたちに、神はイザヤを通して、「見よ、あなたたちの神。見よ、主なる神」（イザヤ40：9ｃ、10ａ）と、さらに多くの人々に主なる神を示し、神の救いを告げ知らせるようにと求めておられます。
わたしたちにとって、生涯かけて礼拝し、お仕えさせていただく神、真に畏れるべきただ一人の神にお会いさせていただくことこそ、真の救いです。もしわたしたちが真の神にお会いできないならば、神ならぬあらゆるものに手を合わせて拝む人生を送る他ありません。また、真に畏れるべき神にお会いできなければ、神以外のすべてのもの、本来恐れるべきではないものすべてを恐れて生きるほか無いでしょう。真の救いとは、そのようなみじめな人生から解放されることではないでしょうか。
アドベントはこのように洗礼者ヨハネに励まされ、クリスマスに「わたしたち一人残らずすべて共に神の栄光を仰ぎ見」させていただくために祈り備える大切な時です。
わたしたちは、洗礼者ヨハネが彼の命をかけて指し示した「聖霊で洗礼をお授けになる」主キリストにお会いさせていただくことを切に望んでいます。「その日」、主はわたしたちにお会いくださるだけではありません。主は、ご聖体において私たちの内にまで来てくださる。そして主はご聖体の内に、ご自身の霊つまり聖霊としてわたしたちの内に働かれ、わたしたちすべてをご自身の似姿に変えてくださいます。
主キリストは、わたしたちにご自身のいのちを与え、聖霊によって新たにするご聖体の秘跡となってくださるために、母マリアさまによってからだを取り人となってくださいます。アドベントにわたしたちが待ち望むのはこの方です。「主の栄光がこうして現れるのを、肉なる者（わたしたちすべて）は共に見る。」それが、クリスマスです。
父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。
