説教
待降節第四主日(B年 2020/12/20)
ルカ1:26−38
父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。
「わたしは主のはしためです。おことばどおり、この身になりますように。」
いよいよ、アドベント最後の主日を迎えました。わたしたちのただ中に輝くアドベントの4本のろうそくに、秘跡における光なる主キリストのご現存をみつめさせていただきつつ、クリスマスの秘義に備える緊張感と喜びに胸がはずむ思いがいたします。
クリスマス前の12月17日から24日までの8日間を、教会はアドベント・オクターブ(8日間)と呼んで大切にして参りました。今日はその中日。この期間、教会は古くからの伝統に従い、日毎のミサの「アレルヤ唱」および「晩の祈り」の「福音の歌(マリアの賛歌)」の交唱)に示される特別な主題を覚えて、一日一日を歩んでまいります。
この期間の福音朗読は、17日のマタイによる福音の「イエス・キリストの系図」に始まり、18日は同じマタイから、マリアさまの夫ヨセフさまへのみ使いの啓示。19日には、ルカによる福音から、キリストの先駆者・洗礼者ヨハネの誕生の予告。今年はたまたま今日の主日に重なりましたが、12月20日は、ルカによる福音から、キリストの母となるマリアさまへの天使ガブリエルのお告げ。21日には、同じルカから、マリアさまのエリザベト訪問。22日は、ルカによる福音から、マリアさまの賛歌。23日も、ルカから、洗礼者ヨハネの誕生。アドベント・オクターブ最終日の24日も、同じくルカによる福音から、洗礼者ヨハネの父ザカリアの賛歌からお聞きいたします。
毎日の主題と福音朗読箇所に導かれて、アドベント・オクターブはアドベントの仕上げとして、クリスマスの秘義に備えて今一度祈りを深めさせていただく時です。(実は、クリスマス Christmas とは Christ-mass であり、「クリスマス」それ自体「キリストの秘義」の意。)
クリスマスにマリアさまを母としてお生まれになられる主キリスト。この方こそ、わたしたちに母の胎の内に命を与え、かつ聖霊によって導き、そのようにしてわたしたちと「始めから」「いつもともに」あってくださった、インマヌエルなる神ご自身です。
罪なるわたしたちには目に見ることが許されないその神ご自身が、主キリストにおいて、ご自身をわたしたちに「よく見て、手で触れる」ことをさえ許し、さらにわたしたちにご自身を「永遠のいのち」としてお与えくださる。それが、クリスマスの秘義。
アドベント・オクターブの今日の福音は、大天使ガブリエル(「神のことば」という名の天使)によって、母マリアさまに、主キリストの受胎告知がなされます。み使いは、ナザレの村のおとめマリアさまを訪れて、神のみことばをお告げになりました。「おめでとう(ギリシャ語 kaire)、恵まれた方。主があなたとともにおられる。」マリアさまは、主を畏れました。そのマリアさまに、天使は告げます。「マリア、恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。あなたは身ごもって男の子を産むが、その子をイエスと名付けなさい。その子は偉大な人になり、いと高き方の子と言われる。」
なお戸惑うマリアさまに、さらにみ使いガブリエル(神のことば)は、優しく、しかし力強く語り続けます。「聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを包む。だから、生まれる子は聖なる者、神の子と呼ばれる。」
「聖霊があなたに降り」と、わたしたちが決して聞き逃してはならないことをみ使いはマリアさまに告げていました。神の御子をその身に宿されるために、マリアさまは聖霊によって守られる。わたしたちも同様です。本来神を見ることさえ許されない罪人であるわたしたちこそ、秘跡の内に、つまり洗礼およびご聖体の二重の秘跡の内に働かれる聖霊の、わたしたちの罪を赦す慈愛のみ力により保護されて始めて主キリストのからだであり主のいのちであるご聖体を受けることが許されるのです。
母マリアさまへの神のことばは次のように結ばれます。「神にできないことは何一つない。」秘跡の内に働く聖霊なる神は、そのみ力によってわたしたちを守り、罪人のわたしたちにご自身を「永遠のいのち」として与えることさえおできになる。もはや、疑うべくもないみことばなる神ご自身に、マリアさまはお応えになられました。「わたしは主のはしためです。おことばどおり、この身になりますように。」
主キリストの誕生。クリスマス、すなわちキリストの秘義。神は、見えないご自身を見える方としてくださいます。それのみならず神は秘跡によってわたしたちを保護し、さらに秘跡においてご自身をわたしたちにお与えくださいます。主キリストは、わたしたちにご聖体として、さらにご聖体の内に働く聖霊として、ご自身をお与えくださるために人となってくださる。主キリストの受肉こそ、神の究極の愛の秘義です。
クリスマスの秘義。わたしたちへの神のこの究極の愛ゆえに、神の母として選ばれたマリアさまは、神の奉仕者としてその尊いご生涯全体を捧げて行かれます。
「おことばどおりこの身になりますように。」
父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。