カトリック上福岡教会

説教

年間第28主日(A年 2020/10/11)

マタイ22:1−10

父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。

「天の国(神の国)は、ある王が王子のために婚宴を催したのに似ている。」

今日の福音は、主キリストの「神の国のたとえ」の内、とくに「婚宴のたとえ」と呼ばれるものです。「婚宴」と言えば、主の「カナの婚宴の奇跡」を思い起こします。ヨハネによる福音(2:1−11)は、主が宣教の始めに、母マリアさまの願いに応えて、最初の奇跡をガリラヤのカナという小さな村の婚宴の場で行われたと伝えます。

それにしても、今日の「婚宴のたとえ」を含め、主キリストは「婚宴」の主題を、「神の国のたとえ」の中でよくお用いになっておられます。

「神の国のたとえ」は、主キリストにおいて「神の国」が来ているという事実を端的に指し示します。とくに「婚宴のたとえ」は、「神の国」には、主キリストによって、主とともに祝う「神の国の食卓」が整えられてあることを、私たちに想い起こさせます。

ただし、「神の国が来ている」ということを、わたしたちのいのちの真実として認め、私たちの身の事実として受け入れるか否かは、主イエズスを「神の国の主」キリストと信じるか否かに掛かっています。すなわち、私たちの信仰の問題です。

主イエズスを「神の国の主」キリストと信じるわたしたちは、「神の国」は、わたしたちののもとに確実に来ているのみならず、そこには、「神の祝宴の食卓」が、間違いなく整えられてあることを知っています。主は今日のたとえの中で仰せでした。

「招いておいた人々にこう言いなさい。『食事の用意が整いました。牛や肥えた家畜を屠って、すっかり用意が出来ています。さあ、婚宴においでください。』」

しかし、主イエズスを「神の国の主」キリストとまだ認められない人にとっては、主キリストにおける「神の国」の到来も認められず、したがって、彼らは「神の国の祝宴」への招きに応えることもないでしょう。主は、同じく今日の「たとえ」の中で、「王が家来たちを送り、婚宴に招いておいた人々を呼ばせたが、来ようとはしなかった」彼らは主の招きを「無視した」のみならず、人々を「婚宴に招くために遣わした王の家来たちを、捕まえて乱暴し、殺してしまった」とさえ、語っておられました。

ここで見逃してはならないことは、主キリストの今日の「婚宴のたとえ」が、主が最後にエルサレムにお入りになられた直後に語られた「神の国のたとえ」であるということです。事実、父なる神が、「神の国の祝宴」に人々を招くために遣わされた御子キリストは、程なく、神が「祝宴」に招こうとされたのに、その招きを「無視した」人々によって、「捕えられて乱暴され、殺されてしまい」ます。しかも十字架の上で。

主キリストは、エルサレムでこの日から数日以内にご自身に起こることの一切を予めご存じの上で、今日の「たとえ」をお語りになっておられることは明らかです。

それにしても、「神の国の主」キリストご自身が、「神の国の食卓」で、わたしたちのために整えてくださった「食事の用意」とは、いったい何だったのでしょうか。

それは、主キリストご自身の御からだと御血に他なりません。わたしたちのために十字架で裂かれた、主ご自身のいのちそのものです。

そうであれば、「神の国の食卓」を、わたしたちのために整えてくださることがおできになる方は、十字架の主キリスト以外にはおられません。そして今日、主キリストは、すでにエルサレムにお入りになっておられます。十字架におつきになられるために。そこで、わたしたちのために、ご自身のからだを裂き、血を流されるために。

古来カトリック教会は、教会の教父たちの信仰と教えにしたがい、ごミサを「婚宴」にたとえられる「神の国の祝宴」と信じ、これに与ることを至上の喜びとして来ました。わたしたちも、代々の教会とともに、今、このごミサで「神の国の食卓」を祝っています。「神の国の主」キリストご自身が、わたしたちのために、十字架でご自身のからだを裂き、ご自身の血を流して整えてくださった「主の過越の食卓」を。

主キリストの福音に聞くわたしたちは、福音に働く聖霊によって、「神の国の主」キリスト以外に、「神の国」をわたしたちに来たらせてくださる方は、他に決して無いことを知らされています。さらに、主キリストとともにごミサを祝うわたしたちは、「神の国」を来たらせてくださる方は、十字架においてわたしたちに「神の国の食卓」を備えてくださるただ一人の方でもあることをも、はっきりと知らされています。

主キリストにおいて、「神の国」は、わたしたちのもとに来ています。わたしたちは、今、主が十字架で整えてくださった「神の国の食卓」に与ります。それがごミサです。

父と子と聖霊のみ名によって。  アーメン。

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